ヒント31 主役を早く登場させる
「何の話なのか」「誰の話なのか」がすぐに分かるように書きましょう。書き手はそれが分かっているので、その紹介が遅れてしまいがちです。
(◆は原文、◇は改善案)
この原文には最初に、「インターネット」「コンピューター技術」「カウンセリング」というカタカナを用いた3つの言葉が登場します。にわかには、何がテーマなのかが分かりません。
改善案では、「新しいカウンセリング」がテーマであることが、最初に示されています。そうすれば、理解がずっと容易になります。
(『文章力の基本』)
原文を読んだ人は、途中までAさんが亡くなったと思うでしょう。修飾語が頭に付く日本語の特性から生まれる誤解です。「主役を早く登場させる」「主語が2つある時は、文も2つに分ける」「挿入句は別の文にして切り離す」に配慮しましょう。
ヒント32 基本は時系列
話は、書き手が思いついた順にではなく、読み手が理解しやすい順に展開すべきです。時間軸について言うならば、やはり基本は時系列(時間を追って古い話から順に書くこと)です。
この文章は、現在 ⇒ ボストン留学前 ⇒ 小学生 ⇒ 高校生という順番に話が展開していますが、次のように小学生の時の話から順に書いた方が、読み手の頭にすんなりと入ります。
(『文章力を伸ばす』)
ヒント33 修飾語は直前に置く
修飾語は思いついた時に思いついた所に書くのではなく、「どの言葉を修飾しているのか」を意識して、その言葉の直前に、あるいはなるべく近くに置きましょう。
原文のように書くと、「春にいただいた桜」だと誤解する人が少なくないでしょう。
原文の語順では、東京で飲んでいるビールが山梨県産のようです。
「山梨県産の」という修飾語と「東京で飲んでいる」という修飾語を隣接させると、修飾語同士が修飾関係を持ってしまうのです。
(『文章力の基本の基本』)
ヒント34 意味の狭い言葉を使う
意味の狭い言葉が、読み手に親切なのです。ヒント6~8で、次のように書きました。
「人間ドックのご案内」というタイトルはあまりに漠然としています。「何の知らせだろう?」と思う読み手の疑問に答えるためには、「検査結果のご説明について」のような意味の狭い言葉を使うべきです。
Part 2 受け手発想で書く ヒント08 宛先とタイトル
「環境を意識する」では、具体的に何をするのかが分かりません。やるべきことをストレートに書きましょう。
婉曲的な言葉や意味の広い言葉の方が格好よく見えてしまうこともありますが、文章を書く時には、「もっと意味の狭い言葉に置き換えられないだろうか」と考えるようにしてください。
(『文章力を伸ばす』)
ヒント35 見出し
業務上の報告書で、「背景」という見出しにしばしば出くわします。
「背景」は意味が広過ぎますので、「市場環境」「技術動向」「競合他社の状況」「顧客からの声」「開発目的」「提案理由」など、内容を特定できるものにすべきです。
報告書のすべてが「内容」ですから、「内容」という見出しには意味がありません。「報告」「概要」「結果」のような見出しも、意味が広過ぎます。
「目的」という見出しも、「打ち合わせの目的」「実験の目的」「出張の目的」「シンポジウム参加の目的」「本レポートの目的」などと明記すれば親切です。
「詳細」という見出しも、たとえば「注目すべき新素材」のように、中味を表す見出しを考えてください。
ある報告書には「レビュー」という見出がありましたが、中味を読んでみると、「今後の課題」のような見出しが適切でした。
その部分の内容を特定できる言葉でなければ、見出しの役割を果たせませんので、漠然とした見出しはむしろ取り去った方が親切です。
(『文章力を伸ばす』)
ヒント36 他の意味に取れる表現は避ける
文章を書き終えたら、「初めて読む人が、違う意味に取る可能性がないか」とさまざまに想像してみる習慣をつけてください。
一読した時には「課長が」だと思いましたが、後を読むと「課長の中から」でした。「から」には、注意が必要です。
この例は、「小型メロンパン」を提案したいのか、「小型メロンパンに似た別のパン」を提案したいのかが分かりませんでした。「ような」という言葉も、要注意です。
(『文章力を伸ばす』)
ヒント37 「因果関係」を明確に
何が原因で、何が結果なのかが、混乱している文章にしばしば出合います。
「退職」と「高齢化」の間には、因果関係がありません。仮に定年が延びて多くの人が働き続けても、高齢化は同じように進みます。
高齢化の原因は、「団塊の世代(戦後すぐのベビーブーム時代に生まれた大勢の人々)が70代になったこと」です。
(『文章力の基本』)
ヒント38 曖昧接続を避ける
原因と結果の間を敢えて曖昧につなぐ書き方を、私は「曖昧接続」と呼んでいます。
この「などと言っていて」は、いかにも曖昧です。
(『文章力を伸ばす』)
最近は、「関係している」「影響する」「つながる」などの婉曲的な表現で、物事の関係を曖昧に表すことが流行っていますが、もっとストレートに書くべきだと思います。
ヒント39 「結論を先に」には例外もある
「結論をまず書こう」とよく言われます。それが多くの場合読み手に親切です。
イエスなのかノーなのかを問われたら、まずイエスかノーかを答えましょう。分からなければ、「分かりません」と答えます。
「誰?」と聞かれたら即座に人を、「いつ?」と聞かれたら即座に日時を答えましょう。その上で、必要に応じてその理由・背景を説明します。
しかし、この原則には例外もあります。次のような場合です。
- 文章をいきなり具体的なエピソードから書き始めるのが効果的な場合。 (後述のヒント70)
- 書き手の言いたいことが、読み手から見て抵抗感が強く、いきなりぶつけると扉を閉ざされてしまいそうな場合。
- 前提となる事実関係を、まず説明する必要がある場合。