Part 9 読点(、)

ヒント57 長めの主語の後に

(◆は原文、は改善案)

 読点は、大きな意味の切れ目を示します。
 長めの主語の後に読点を打つと、「Aが(は)、Bである」という文の基本形(ヒント15)が、一目で分かります。

◆互いに手を取り合って、震災から立ち直ろうという思いがその地域を一つにしたと思う。

◇互いに手を取り合って震災から立ち直ろうという思いが、その地域を一つにしたと思う。

(『文章力の基本の基本』)

ヒント58 長めの目的語の後に

 長めの目的語の後に読点を打つと、「Aを(に)、Bする」という文の基本形(ヒント16)が、一目で分かります。

◆犬が欲しいと言い続けて3年ぐらい経ってからようやく飼ってもらった時の嬉しさを今でも忘れていません。

◇犬が欲しいと言い続けて3年ぐらい経ってからようやく飼ってもらった時の嬉しさを、今でも忘れていません。

(『文章力を伸ばす』)

 読点が全く打たれていないと、読み手は読みながら意味の切れ目を探さねばなりません。

ヒント59 原因と結果、理由と結論の間に

 原因と結果、理由と結論からなる文章は、とても多く見られます。その間に読点を打つと、文の構造が一目で分かります。

◆せっかく新しい生活を始めるのだから家具も新しくそろえたい。

◇せっかく新しい生活を始めるのだから、家具も新しくそろえたい。

(『文章力の基本』)

◆外国に留学し語学学校に入った日本人は引っ込み思案で話さないので最下級のクラスに入れられることが多い。

◇外国に留学し語学学校に入った日本人は、引っ込み思案で話さないので、最下級のクラスに入れられることが多い。

 ここではまず、長めの主語の後に読点を打ちました。次に、理由の説明の後に打ちました。

(『文章力の基本100題』)

ヒント60 「状況・場」と「そこで起きていること」の間に

◆初めて営業という仕事にまわされて非常に苦労している。

◇初めて営業という仕事にまわされて、非常に苦労している。

(『文章力の基本』)

 「こういう状況で、こういうことが起きている」という読点です。次の原文のように意味のつながりがある所に読点を打つと、話がプツプツ切れてしまいます。

◆このごろは、テレビアニメを見ながら、兄弟で楽しそうに、宇宙遊泳ごっこをしています。

◇このごろはテレビアニメを見ながら、兄弟で楽しそうに宇宙遊泳ごっこをしています。

(『文章力の基本の基本』)

ヒント61 読点が欲しい場所一覧

 読点を打つことが望ましい「大きな意味の切れ目」を、私は次のように整理しています。

<読点がほしいところ>

  • ① 長めの「主語」の後
  • ② 長めの「目的語」の後
  • ③「原因」と「結果」、「理由」と「結論」の間
  • ④「状況・場」と「そこで起きていること」の間
  • ⑤「前提」と「結論」の間
  • ⑥ 時間や場所が変わるところ
  • ⑦ 逆接に変わるところ
  • ⑧ 対比したり、言い換えたりする時
  • ⑨ 別の意味に取られたくない時
  • ⑩ 隣同士の修飾語の間に、予想外の関係が生じてほしくない場合
  • ⑪ ひらがな、カタカナ、漢字ばかりが続く場合
  • ⑫ その他(挿入句の前後、長い修飾語の切れ目、目的の説明の後、手段の説明の後など)

  前項までで ①~④ の文例を示しました。
  他の多くは拙著に譲ることにして、この後、⑨と⑩の文例を示します。

(『文章力を伸ばす』)

ヒント62 読点によって意味が変わるケース(1)

 読点の有無によって、あるいはその位置によって、別の意味になってしまうことがあります。

◆この人のような人に希望を与えられる仕事に就きたい。

◇この人のような人に、希望を与えられる仕事に就きたい。

◇この人のような、人に希望を与えられる仕事に就きたい。

 最初の改善案の「この人」は人から希望を与えてもらう人ですが、次の改善案の「この人」は人に希望を与える人です。

(『文章力を伸ばす』)

◆この製品により多くの電力を節約することができます。

◇この製品により、多くの電力を節約することができます。

 「より多くの」と続けて読まれると、別の意味になってしまいます。そのために間に読点を打ちました。

(『文章力の基本』)

ヒント63 読点によって意味が変わるケース(2)

 隣り合った修飾語同士が、想定外の修飾・被修飾の関係を持って意味が変わってしまうことがあります。読点でそれを防ぎます。

◆これは当社がデザインした婦人服用のボタンです。

◇これは当社がデザインした、婦人服用のボタンです。

 ここでデザインしたのはボタンでしたが、原文は婦人服をデザインしたとも取れてしまいます。
 「ボタン」の前に、「当社がデザインした」と、「婦人服用の」という2つの修飾語が並んだために、「デザインした」が「婦人服」を修飾しているという誤解を生んだのです。
 2つの修飾語の間に読点を打つと、誤解を避けることができます。

 この場合には、次のように語順を入れ替えたり、2つの文に分けると、さらに明確になります。

◇これは、婦人服用に当社がデザインしたボタンです。

◇これは、当社がデザインしたボタンです。婦人服用です。

(『文章力を伸ばす』)

ヒント64 意味の固まりを読点で分断しない

 読点は、意味の大きな切れ目を示すものですから、一連の意味の固まりを読点で分断しないようにします。

◆緊張でコチコチになって迎えた、本番は納得の行く出来ではありませんでした。

◇緊張でコチコチになって迎えた本番は、納得の行く出来ではありませんでした。

 「迎えた本番」は、間で切りたくありません。
 上のように読点で切れば、主語+述語の基本形も明確になります。

◆日本では分刻みで時刻表通りに、運転するのが当たり前だと思われている。

◇日本では分刻みで時刻表通りに運転するのが、当たり前だと思われている。

 「時刻表通りに運転する」も、分断すべきではありません。これも、長めの主語の後に読点が欲しかった例です。

(『文章力を伸ばす』『文章力の基本100題』)

ヒント65 句点は文末のみで打つ

 1つの文の終わりには、必ず句点(。)を打ちますが、文の途中には打ちません。

◆先入観で、理系は就職に有利である。また、給料が良いと思っていた。

◇先入観で、理系は就職に有利であるし、給料も良いと思っていた。

◇先入観で、「理系は就職に有利である。給料も良い」と思っていた。

 この例は、「思っていた」という述語が来て初めて文が終わります。ですから、「有利である」の後に句点は打ちません。
 最初の改善案は、句点を読点に換えて後に続けました。
 次の改善案は、頭の中で考えたことを「 」でくくりました。こうすると、「 」の中は句点を打ちながら、書き進めることができます。

(『文章力を伸ばす』)

ヒント66 「ちょっと一息」 日本語は曖昧か

 一部の人が信じているように日本語が曖昧だとか、非論理的だとかいうことはないと思います。日本語でも英語でも他の言葉でも、明快で論理的な表現もできれば、曖昧で非論理的な表現もできます。

 ただ、日本人に曖昧な表現を好む傾向があるのは確かです。つまり、言葉が曖昧なのではなくて、人々が時にそれを曖昧に使おうとするのです。その理由は、主として次の5つではないかと思います。

  1. 日本では、お互いに相手が「一を聞いて十を知る」利発さを持っていると信じているかのように振舞うので、すべてを明確な言葉で説明してしまったら失礼にあたると考える。
  2. 日本は同質社会で、人と違ったことを言うと白い目で見られるので、相手との意見の相違があからさまにならないように、お互いに曖昧な表現で相手の意向を探り合おうとする。
  3. 相手を敬い、相手に裁量の余地を残そうとして、意図的にぼやかした表現で相手に問いかけようとする。
  4. ストレートに言わないで、婉曲的に表現した方が、奥ゆかしくていいという感覚がある。
  5. 長い間以心伝心を理想として来たので、それに甘えてしまって、「言い回しはまずいかもしれませんが、私の言いたいことは察していただけると思います」と相手の好意に期待してしまうところがある。

(参考文献:森本哲郎『日本語 表と裏』新潮社)(『文章力の基本』)

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電子書籍シリーズ『命ささらぐ』
(アマゾン他で発売中。1部280円+税)

「第4部 ヒマラヤへの卒業旅行」

第4部の表紙は、アマダブラム 6812m

 ビジネスキャリアからの卒業旅行として、山岳写真の仲間とヒマラヤ山中を15日間歩いた。8000メートル級の山々はもちろん雄大だったが、寝食を共にした高地民族の人たちとの触れ合いもまた、強烈な思いを残してくれた。

 彼らは零下10度の屋外で、吹きさらしの簡易テントの下で毛布1枚にくるまり、数人で体を寄せ合って冗談を言いながら寝ていた。

 高度にももちろん強いが、夜目も利く。体温の自己調節能力にも優れている。空気も水も少なく、物資も少ない山間にあって、高地民族の人々は明るくくったくがなかった。

 ルクラへ
 ネパールの首都カトマンズ(標高約1350m)から、十八人乗りのプロペラ機で東へ約40分のルクラ(2800)へ向かう。

 眼下に見えてきたルクラ空港に、周囲の乗客は少々驚き、そして不安を隠すために笑みを浮かべる。それはまるで山腹を、人差し指一本で縦に真っ直ぐ引っかいたような滑走路だ。幅も長さもたいへんに控え目だ。

 しかも、水平ではなく相当の登り勾配になっている。滑走路の先には山肌がそそり立っている。飛行機は着陸すると、登り勾配も利して減速し、目の前に山肌が迫って来ると、右に旋回して停まる。そこには小さなターミナル・ビルがあった。(帰りに下り坂の滑走路から離陸する時も、当然スリルがあった)

 「ホリデー・ロッジ」で、その日から十五日間寝食を共にするシェルパたちと対面した。私の同伴者は、ラム・タマンというタマン族の四十五歳の男だった。小柄で色浅黒く、笑うと愛想のいい顔になる。まずは握手を交わす。
 白地に柔らかな赤と水色を配した縁なしのネパール帽を被っている。幸い英語がうまく、日常のコミュニケーションに不自由はなかった。何かを頼むと、ネパール人がよくやるように、いつも笑って小首を傾げ、「オーケー」と言った。

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