ヒント52 「に」と「で」を使い分ける
(◆は原文、◇は改善案)
「ここにある(いる)」というように、「存在」には「に」を、
「ここで目にする」というように、「行為」には「で」を使います。
(『文章力を伸ばす』)
ヒント53 「を」ではなく「に」を使う
「練習を打ち込む」ではなく、「練習に打ち込む」です。
「勉強を励む」ではなく、「勉強に励む」です。自動詞の前は「に」なのです。
「配慮する」を「気を配る」と言い換えてみれば、「事情を気を配る」ではなく、「事情に気を配る」であることが分かるでしょう。和語に言い替えてみると分かる例です。
(『文章力を伸ばす』)
ヒント54 「に」ではなく「を」を使う
次は、「に」ではなく「を」が適切な例です。他動詞の前は「を」なのです。
(『文章力を伸ばす』)
(『文章力の基本の基本』)
(『文章力の基本』)
ヒント55 「を」と「で」、「を」と「が」を使い分ける
「お金を貯める」「そのお金で買う」です。
(『文章力の基本の基本』)
最近、「医療機関を受診する」という表現がよく使われていますが、「受診する」を「診察を受ける」と言い替えてみると、「医療機関を診察を受ける」ではなく、「医療機関で診察を受ける」でしょう。
『広辞苑』は、「で」の多彩な意味を次のように説明しています。
「動作の行われる所・時・場合を示す」(「家の中で遊ぶ」)
「手段・方法・道具・材料を示す」(「ペンで書く」)
「理由・原因を示す」(「かぜで休む」)
「事を起こした所を示す」(「会議で決めた事だ」)
「事情・状態を表す」(「いいかげんな気持ちでやる」)
「期限・範囲を示す」(「明日で公演は終りです」)
「配分の基準を示す」(「1時間で4キロ歩く」)
これは、『広辞苑』の説明の最初にある「場合」を示す「で」でしょう。
(『文章力の基本』)
「を」と「が」を使い分ける
「英語を話す」「英語ができる」ですね。
「名案がひらめく」であって、「名案をひらめく」ではありません。
(『文章力の基本の基本』)
「へりくだる」は自分がすること(自動詞)ですので、「が」です。
一方で、「見下す」は他人をさげすむという他動詞ですから、「を」です。
次の5つは、「が」+自動詞、「を」+他動詞の例です。
(『文章力を伸ばす』)
(『文章力の基本』)
「私が行きます」のように、「が」は一般に主語を表す助詞と考えられています。しかし、もう1つ大事な使われ方があります。次のような目的語を表す用法です。
「水が飲みたい」
「お小遣いが欲しい」
「野球が好きだ」
「当地でもうまい魚が食べられます」
「この家がとても気に入った」
「あの外国人は日本語が分かるようだ」
(文例は、森田良行『助詞・助動詞の辞典』東京堂出版)
ヒント56 「ちょっと一息」「は」はスーパー助詞
金谷武洋は、『日本語に主語はいらない』(講談社)の中で、
この本は、タイトルがいいので、大いに期待した。図書館ですぐ読んだが、得るところはなかった。まったく期待はずれだった。
という文章は、次のような意味だと指摘しました。
(この本の)タイトルがいいので、
(この本に)大いに期待した。
(この本を)図書館ですぐ読んだが、
(この本から)得るところはなかった。
(この本が)まったく期待はずれだった。
つまり、最初の「この本は」の「は」は、いくつもの文にまたがって、さまざまな助詞(の、に、を、から、が)の役割を代行する力を持つ「スーパー助詞」なのです。
ということは、「は」が使える場面は沢山あります。「ここに『は』を使ってもいいのだろうか?」と疑問に思った時は、こういう視点でチェックしてみてください。
(『文章力の基本100題』)